さらば愛しき過去たちよFarewell, my beloved past

行為者|レーニアさんActor|Rainier

発見者|FukuFinder|Fuku

もしかしたら、この“別れの儀式”を行う為に、彼はいつも探し求めているのかもしれない。
 
 毎朝、通所とともに彼は行動を開始する。作業所中を回り、各部屋をくまなく探す。駐車場に停めてあるトラックの荷台の隙間を覗く。その眼光は鋭く、いつもと違う風景はすぐに察知する。時には“空(くう)”を見つめ、何かを感じているよう。そうして目的の“箱”は発見される。こだわりの条件は、持ち運びができる適度な大きさであること、色味(特に赤)があって、叩くと良い音がすること、など。ただ、好みの“箱”が手に入ったからといって満足はしない。ふいに姿を消したかと思うと、いつの間にか行動を再開している。そして、新たな”箱“が発見されると、それまで手にしていた”箱”は自らの手で破かれ、置き去られる。それはまるで、過去への未練を断ち切るかのようである。彼が帰った後は、過去という“残骸”がただそこに横たわっている。
 
 新しい一日の始まり。振り返らない彼は、今日もまた探し求める。