夏休み初日のこと。朝5時に起床し、開口一番「今日はSOGOに行くよ!」と言い出したハルタニ。寝耳に水とは正にこのこと。SOGOは我が家にとって日常生活の圏外。年に一度買い物に出かけるくらいのもので、5歳の彼にとってはとりたてて楽しい思い出もないはず。一応理由を聞いてみると、「“ゆめのせかい”があるんだよ!」とのこと。ゆめのせかい?ますますわけがわからない。仮に出かけるとしても、横浜散策で利用しているいつものパーキングからはあまりにも遠く、おまけに今日は猛暑日予報。とにかく諦めるよう交渉するも、「休めるトコはいっぱいあるから大丈夫!」と、既に下見を済ませているといった口振り。結局、ハルタニの熱意に負けた私は、覚悟を決めて彼と共に“ゆめのせかい”を目指すことにした。
旅のスタートは午後の暑い盛り。灼熱の太陽の下、コンクリートジャングルをスキップで進むハルタニを見ているだけでクラクラするも、要所でエアコンの効いた施設で小休憩を入れてくれたおかげで、なんとか歩みを進めることができた。そして、最後の直線に差し掛かり、SOGOのマークが視界に入ると、嬉々として走り出したハルタニ。しかし、どういうわけか入り口付近で立ち止まったまま中に入ろうとしない。
「どうしたん?“ゆめのせかい”に行こうや。」
「着いたよ。ココだよ。」
「なんで?」
あたりに“ゆめのせかい”らしきものは一切見当たらない。彼の目には一体何が見えているのだろう?気になった私は、彼にデジカメを渡して撮影を促したところ、6回シャッターを切った。
「どういうこと?」
「SOGOの中を歩いてると夜なのに、外に出ると昼なんだよ。」
どうやら、かつてSOGOを訪れた際、この場所で夜と昼を一緒に感じるという不思議な体験をしたそうで、その感覚をどうしても私に伝えたかったようだ。“ゆめのせかい”とは思わなかったものの、帰宅後、ハルタニの万歩計が示す「31619」歩の数字から、彼の伝えたい!という思いだけは確かに受け取ることができた。