一生をかけて自分の心を静める方法を探す者がいる中で、彼女は１歳にして、すでにその方法を習得していた。
 
『全集中～がさがさの呼吸』
利き手である右手指を使い、ズボンのゴムを「がさがさ」と触り、音を奏でる。
音の大きさは、彼女の集中力に比例する。周りに聞こえるほどの「がさがさ」が出された時、周囲の音は遮断され、彼女が全神経を集中させ、体の回復をはかっている合図である。
ただ、苦難もあった。世の中は、「がさがさ」ができる服ばかりではない。小さい時は、「壱の型：腹がさ」しか使えなかったため、着られる服に限りがあった。
 
小学校に上がり、制服になることで、「弐ノ型：首がさ」「参ノ型：手がさ」を新たに編み出し、現在どのような環境でも自分の心を落ち着かせる方法を習得している。