巻物に恨みでもあるのだろうか。
うちの夫は、私の出す食事に感想を言わない。
照れ屋であり、口下手であり、感情に波がないという性格もあり、だ。
そんな夫が二度、かすかな抵抗をした日があった。
そういえばどちらも巻物の日。
一度目は節分の日の太巻きで、二度目はきゅうりの肉巻きだった。
隣同士に座って食事を始めると、奇妙な方に夫は太巻きをほどいた。
ご丁寧にも縦に箸を入れ、ばらり。
そして中の具材だけをぱくぱく。
最後に残った海苔とお米を美味しそうに頬張ったのだ。
「なんでそんなん、、、?」
理解を通り越すと人はかける言葉に迷うのだな、とこの時学んだ。
そしてきゅうりの肉巻き。
ほどけないようにぎゅっと巻いたきゅうりと、照りの良いタレが絡んだおかずは切った断面の美しさが全面に出た自信作だった。
食べ始めると、スポ、、スポ、、、。きゅうりだけ根こそぎ口に放り込まれた。
「なんでそんなん、、、、」
そんなん料理への冒涜だ、ましてや作った本人の横でやるなんてサイコパスかとまで思った。
だが本人曰く、
「逆。この料理はコメへの冒涜であり、コメへのリスペクトだ」とさらりと言ってのけたのだ。
コメは太巻きのようにゴチャゴチャ具を乗せずとも美味いし、瑞々しいきゅうりよりもガツンとした豚肉の脂との相性が良い。
よりコメを美味しく食べたいがための、夫なりのこだわりだった。
理論はわかりつつも、やはり私の中では今でも「それなんなん」だ。


