千恵さんは、毎日日記を書いています。
彼女が日記に記す内容は、テレビ好きの彼女がその日に見た番組のタイトルや、その日にしたこと、行ったところ、感じたことなどです。
それらを伝えるために記す彼女の文字は、カリグラフィのような美しさに仕上げられ、絶妙な配列で綴られた文章の結びの大半は、「三人でねました。」(もしくは、ねました)で締めくくられます。
文字の絶妙な配置と美しい形状、繊細な線描で記された文字もあれば、その線描が何重にも重なって厚みを持ち、力強くデフォルメされた文字になります。さらにキュートな文章表現。いつも「一人」で寝ているはずなのに、「三人でねました。」と結ばれていることなどなど。
それらの全てが私にとっては「なんでそんなん?」と、とても気になるのです。
「これ、どういうこと?」と、よく千恵さんに訊ねるのですが、なかなか要領を得ず、最後には彼女も首を傾げてしまい・・・分からないまま毎日が過ぎて行きます。
それでも千恵さんは、毎日日記を見せにきてくれます。分からないこともあるけれど、私はその美しさとキュートさに、毎日目を奪われるのです。