忍者修行Ninja training

行為者|ツワモノくんActor|Tsuwamono-kun

発見者|母Finder|Mother

しばしば学校や学童の先生から困り事を言われる。聞くと、ほぼ毎日何かある様子。
「ツワモノくんが登校班の列からはみ出すんで困る」
「ツワモノくんが〇〇くんを引っ掻いて‥」
「なわとびを振り回してそばにいた子に当たって‥」
 ツワモノくんに悪意がないことは分かっている、クラスのみんなも理解して接してくれています、と言いつつ、「すぐカッとなってやっている」風に捉えている感じ。そうじゃないんだけと。
「おうちでもよく言い聞かせてください。」「これから力も強くなるし、衝動性が心配です。ずっとついてられたらいいのですが‥」
 毎日怒られるのはしんどいな、とツワモノくんに共感しつつ、母は、何となく違和感を持った。
 
 ツワモノくんが困っていることは何も解決していない。
 
 ツワモノくんは友達と仲良く登校したいし、一緒に遊びたい。周りの人を傷つけずに、ツワモノくんのやり方で、どうすればそれが出来る?
 
 母は悩んだ。慎重に動く感じは、言葉じゃなくて感覚だ。彼が自分で掴めるようなもの‥。
 
忍者だ。忍者修行。
 
 日頃から強くなりたい、剣が使いたいと言っているツワモノくん。
案の定、「忍者になる修行しよう!」と言ったら快く応じてくれた。
 そろり、そろりと探りながら、後ろ向きで階段を降りる。
 棒をふんわり投げてキャッチしあう。
 でっかい水鉄砲を使って、「剣をすーっと抜く練習」。
 ここまでくると、母の願いは「立派な忍者になってくれ!」に変わっていた。まあいっか。
 
 ツワモノくんは楽しそうだし。
 何より、「周り全員敵」とどんより暗かった母の気持ちは軽くなった。
 彼は、きっと全然違う時に「こういうことか!」とコツをつかむんだろうな、と思いつつ、今日も親子で忍者修行に励むのであった。