片方だけのサンダルOne sandal only

発見者|紫野道風Finder|Shinotohu

休日の公園でベンチに腰掛けると、必ず目に飛び込んでくる光景があります。そう、サンダルが片方だけ置かれているのです。
「いや、片方だけでどないすんねん!もう片方は地球のどこ行っとるんや!」と、まず心の中で強烈にツッコミ。しかしそれだけでは終わりません。「片方だけで歩く気か!足痛ないんか!」とさらに叫びたくなる衝動に駆られます。
 
観察を続けると、サンダルの角度やベンチでの位置も毎回微妙に変化。端っこに寄せられたり、座面の真ん中に鎮座したり。落ち葉や日差しとの位置関係も絶妙で、まるでサンダルが意思を持ってベンチ上で踊っているかのようです。「お前、今日も冒険か?いや家出か?宇宙から飛んできたのか?」と、勝手に妄想の階段を駆け上ります。
 
さらには、周囲の小鳥や風の影まで含めて、「このサンダル、自然界とも通じてるんとちゃうか?」と無駄にドラマチックに考えてしまう自分。まるで日常の中に潜む小さな演劇を一人で観劇しているかのようです。
 
その時、通りかかった小学生が言いました。
「わあ、片方だけ置いてるある!絶対忘れてるやつやん!」
 
思わず吹き出してしまいました。さらにもう一人の子どもが笑いながら一言。
「今度はもう片方も戻ってくるんちゃう?」
 
片方だけのサンダルは、ただの忘れ物ではありません。日常の小さな不条理に突っ込み、観察し、妄想を膨らませ、通行人の一言でクスッと笑う――そんな時間こそ、私にとってのささやかな喜びです。今日もサンダルは静かに、そして堂々と私の視線を釘付けにしています。