連絡帳Contact book

行為者|TaさんActor|Mr.Ta

発見者|山根(支援者)Finder|Yamane (Supporter)

Taさんは平日の日中を生活介護事業所に通い、夜はグループホームに帰る。
生活介護とグループホームのスタッフ間でやりとりする「連絡帳」。
 
ある時から、Taさんが空白のページに色々な文字を書きこむようになった。
日付がついているので、その日の記録、あるいは連絡なのかもしれない。
書き終えるとスタッフに見せ、「できた」「じょうず」と言って、スタッフも「じょうず」と返す。それから自分のリュックにしまう。
 
大和路線 大阪環状線
普通 快速
EDWIN
本田望結
橋本環奈
住宅情報館
 
最初はこれが定型だったけど、日を追うごとに語句が増えていく。
文字は踊り始め、効果的に線が加えられる。
 
このままエスカレートしていくのかなと思ったら、
ページの余白を活かして配置される時期が挟まれる。
書道でも「余白」が大事というし、華道の「引き算の美学」にも通じるのかもしれない。
 
そして、ぺージが文字と線で埋め尽くされる時期がくる。
ボールペンに加えてマジックペンが使われ、独特のルールで重ねられていく。
 
そして、真っ黒の「連絡帳」が完成した。
 
 
 

 
 
 
これはTaさんのプライベートな創作物でしょう、
webサイトにアップするなんて、Taさんは望んでいないんじゃないの?
確かに、投稿の許可をもらってはいても、Taさんの本当のところはわからない。
僕は、Taさんについて投稿することを、自分で正当化できない。
 
それでも、
「自分は行の途中から大胆に文字を書くなんてできないな」
「関西本線を4行にわたって書くのってどういうことやろう」
「この表紙のテクスチャーはすごい」
言葉少ななTaさんの、大切な表現、個性に対する驚き/感動をどうしたらいいんやろう。
それを、コンプライアンスの中で平準化してしまうことが、どうしてももったいないような気がする。
 
葛藤するならやめておいた方がいいんじゃないか。その方が無難じゃないか。
でもなぁ…
連絡帳を、その目的から逸脱して真っ黒にしてしまう行為。
これをポジティブに捉えることが、Taさんの生きやすさにつながるなら、
自分は葛藤していても他の人と共有したい。
 
そんなこと、Taさんは多分どこ吹く風で次の創作に取り掛かっているけど…