●なんでそんなんの発見場所
自宅の洗面所
●なんでそんなんの状況
我が家のシャンプーやリンス、ハンドソープの詰め替えは、妻の担当だ。そしてその詰め替え方は、常軌を逸しているほどに完璧なのである。詰め替えパックの中身をボトルに移した後、妻はハサミでパックを切り開き、指、いや、時にはヘラのようなものまで使って、内側に残った最後の一滴まで、完璧にこそぎ取るのだ。その執念は、まるで古代遺跡を発掘する考古学者のようでもある。
●なんでそんなんへのツッコミ
なんでそんなん!?いや、節約熱心なのは分かる。分かるけど、そこまでしなくても!ボトルに八分目くらい入れば、もう十分じゃないか!その最後の一滴を救出するために費やす君の時間と情熱、時給換算したら、新しいボトルが買えちゃうよ!と、心の中でツッコミを入れる。
●なんでそんなんから考えたこと
最初、僕はその行為が理解できなかった。しかし、ある日、彼女が「できて当たり前」という減点評価の中で家事を強いられてきた、子供時代の話を聞いた。彼女にとって、詰め替えパックに一滴でも中身を残すことは、許されざる「失敗」だったのだ。完璧にやり遂げなければ、誰かに叱られる。その強迫観念が、彼女を「最後の一滴」へと駆り立てていた。そう気づいた時、僕は彼女の行為を笑えなくなった。そして、こう言うことにした。
「すごいね!君は、シャンプーの命を、最後まで使い切ってあげる天才だ!」と。僕の「鑑賞」の言葉に、彼女は少しだけ、救われたような顔で笑った。
僕には理解しがたい「なんでそんなん」の裏側には、その人が生きてきた、切ない物語が隠れているのかもしれない。
